ボークス造形村透明シリコンの気泡除去(気泡のないシリコン型の製作法)
CIEM自作にはボークス造形村透明シリコンでメス型を作るのが定番であるが、これは非常に粘性が高いので、混ぜると気泡が入って取れない。その気泡をほとんどゼロにする方法を書いておく。
(以下はCIEM制作を仮定する。プラモデル等の場合、使うシリコンの量がCIEMより数倍多いかと思うので、その場合は注意されたい)
必要なもの
- まず食品用減圧容器を買う。これは1.8Lなどの最大サイズのものでよい。どこのメーカーでもいいが、私は加藤産業のものを使っている(多分一番安い)。
- Amazon|加藤産業 真空保存庫 VL-2B|真空保存容器 オンライン通販 (別売りのポンプも買うこと)
- Amazon.co.jp : 加藤産業 真空保存庫用ポンプ VP-1B : ホーム&キッチン
- 商品名は「真空容器」だが、実際の真空には程遠い。私は「減圧容器」と呼んでいる。
- キッチンスケール(重量をはかるやつ)を持っていないなら、買っておく。重量を量らずに混ぜると硬化不良が起きる。
- 百均でタッパーと、製菓用のヘラを買っておく。
- タッパーは減圧容器に入り、ヘラはタッパーの短辺よりやや小さいサイズであること。
- タッパーは「電子レンジ可」のものを買うこと。ポリプロピレン製であれば間違いない。
- またタッパーの蓋は使用しない。
- ボークス造形村透明シリコンは持っているものと仮定する。ちゃんと残量が足りるか確認しておく。
- シリコンの量については自分の作業環境において片側何グラム必要なのか把握しておくべきである。うちの場合、約50gだ。(両側で100g)
- 最初の一回はわからないので、多めの量を混ぜて作業し、その際に重量を測ってメモしておく。
- 「両側で100g」だからといって、100gちょうどを混合してはいけない。一部は「混ぜる容器」にへばりついて取れないからである。(120gなら間違いなく足りる)
シリコン作業の前にやること
- インプレッションを取って加工するなどの作業。この作業の出来次第でメス型の質が大幅に変わってくる。
- 「インプレッションを固定したメス型の型」を作っておく。一番簡単なのは「底が平たい缶コーヒーの空き缶を切って作った容器」の底にインプレッションをアロンアルファで接着することだ。
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- SoundLinkでこれを買うといい。普通は小さい方のサイズでよい。注文個数を2つにしないと、1個だけ来て悲しいことになる。なお、SoundLinkの場合、BAは注文個数1で左右1個ずつ来る。
- うちには上記の容器が1個だけある。
作業手順
- まずタッパーの重量を量っておく。主液をタッパーに入れ、主液の重量を量って計算し、メモしておく。
- タッパーごと湯煎し、主液に対し1/10の重量の硬化剤を入れ、ヘラで手早く混ぜる。そのまま食品用減圧容器で減圧する。「ポンプを40秒操作したら水平に揺さぶる」という行為を何度か行う。
- 「湯煎」は一度沸かしたお湯の火をとめ、主液を入れたタッパーを5分程度浮かべておくだけで十分である。沸騰していると飛び散った水滴が入るなどトラブルの原因になる。湯煎の目的は粘度を減らすためである。とくに冬場は湯煎しないと硬化剤を混ぜることすら難しい。
- 「手早く混ぜる」は30秒程度でキッチリ混ざるように混ぜることをいう。予め入れるべき硬化剤の量を計算しておくのが望ましい。ここに時間がかかると、液体の粘度が上がって気泡が抜けなくなる。
- ヘラを使うことで効率的に混ぜられる。横着して割り箸で混ぜたりすると無駄な時間がかかって気泡が抜けずに失敗する。
- 「ポンプを40秒操作」とは「全力でポンプを上下させる」という意味だ。肩で全力疾走するようなもので、たいてい肩の三角筋に乳酸が溜まる。
- 「水平に揺さぶる」と、タッパーと減圧容器の壁どうしが衝突して振動が加わるので、シリコン表面の気泡が消える。減圧しただけだと気泡は表面に移動するだけで消えるとは限らない。振動・衝撃が重要である。
- 表面の気泡が消え、シリコン内部に1mm程度の大きさの気泡が残った状態になったら減圧容器から取り出す。内部の気泡は除去困難だが大気圧に戻すと見えなくなる。
- 目で見て見えない微細な気泡はあっても問題にならないので、無理に内部の気泡を消そうとしないこと。
- タッパーを減圧容器から取り出したらヘラを用いずに、タッパーを傾けて重力だけでシリコンを「インプレッションを固定したメス型の型」に流し込む。左右ペアで作る場合は半分ずつ流し込むように注意する。重力だけで流し込んだ時点でカナルの先端まで埋まっているのが望ましい。
- このまま放置すれば気泡のないメス型ができる。「メス型の型」を減圧する必要はない。
- タッパーにへばりついたシリコンはヘラで削ぎ落とすわけだが、その際に確実に気泡が入るのでいまいち使い出がない。
- ヘラの先端がシリコンで出来ている場合、洗わずに放置すると造形村のシリコンが癒着して取れなくなる恐れがあるので、作業終了後に必ず洗うこと。
- シリコン樹脂以外の樹脂、とくにポリエチレン、ポリプロピレン製ならば癒着しない。
いろいろ
気泡を抜くため、いろいろなやり方を試したが「タッパーとヘラ」の組み合わせが最も気泡が少なく混ざりやすいかと思う。タッパーは「メス型の型」に比べて面積が大きいゆえ、液面の高さが低くなる。つまり、タッパーのまま減圧すれば気泡の移動距離は1センチか2センチ程度で済むので確実に抜けると。もちろん電動の真空ポンプを持っている人はそれを使ったらよろしい。
シリコンが硬化不良を起こした場合、追加で20時間ぐらい放置しておくと硬化することがある。また、ボークス造形村透明シリコンの硬化時間は24時間だが、寒い時期は24時間といわずに36時間ぐらいおいた方がいいかと思う。
上記の話とは無関係だが、エポック光硬化樹脂(369樹脂)はポリエチレンは溶かさないので、この樹脂を扱う場合はポリエチレン製のスポイトを持っていると便利である。5mlで50本入りのものがAmazonで数百円で売られているかと思う。