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スピーカー用ネットワーク(ハイパスフィルター)を作った

先日、 Technics SB-CH9 (Panasonic製) というスピーカーを入手した。正確にはたまたま人からもらったスピーカーが SB-CH9 というモデルだったわけだが、このスピーカーどうにも妙である。調べると90年台に売られていたコンポの一部らしいのだが、スピーカー端子がハイとローの2セットあるのだ。裏にバスレフポートの空いているブックシェルフスピーカーなので、スピーカー端子を外して内部をライトで照らし見てみたところ、どうもネットワークが入っていないように見えた。

とりあえずヘッドホンアンプとして使っていた真空管アンプがたまたまプリメインで、スピーカーケーブルも余っていたのでロー側だけケーブルを繋いで聞いてみたが、かなり物足りない音で残念だった。

ハイ側に端子を繋ぎ、かすかに聞こえるかどうかの非常に小さい音量でクラシック音楽をかけたところ、ノイズが入った。これで直結だと確定した。なんと困ったことにマルチアンプ(?)仕様らしい。*1

仕方ないのでハイパスフィルターを自作した。

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回路とツイーターに対する入力信号の周波数特性 (対数表示)
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ツイーターに流れる電流 (線形表示)

使ったのは新しく購入した0.33mHのコイルと家にあった6.8uFのタンタルコンデンサだ。計算上のカットオフ周波数はだいたい3300Hz。今思えばもう少し高くしてもよかったように思う。実際、インダクタンスが低い方がカットオフ周波数は高くなりコイルの値段は安くなるわけだし……。

というわけで3way全て機能するようになったので聞いてみたが、まあ音は思っていたよりはいい。机の上に直置きすると低音(500Hz以下ぐらい)がかなり変になるので底面に不要な本を挟んで少しウーファーを高くしたところ正常になった。100Hz前後の低音は全く出ない。サイン波を再生すると普通の音量が出るのが200Hzぐらいまで。120Hzだとかろうじて聞こえ、100Hzだと全く聞こえなくなる*2。一方、中高音は意外なくらい自然だ。交響曲は流石に苦しい。

置く場所がないものでパソコンデスクに置いているのだが、キーボードを触るとほとんどスピーカーの間に頭を突っ込むような位置関係になって妙な音になるのが困ったところ。椅子の背もたれにもたれて1.2mぐらい離すとだいぶ自然に感じられる。

サイズは縦36cm、横18cm、サランネット含む奥行き26cm。板はMDFの15mm。いずれの数値も私が30センチ定規で雑に測ったもの。ツイーターにハイパスフィルターを入れる場合、カットオフ周波数は12dbで3kHzが下限ぐらいかと思う。正直6kHzにすりゃよかったと思っている。

チャンネルデバイダーを使って適切なカットオフ周波数を検証し、音響的にしっかりした部屋で頑丈なスピーカースタンドに載せて鳴らせばそれなりに鳴ってくれそうな気もするが、そこまでする製品でもない。そもそも私はウサギ小屋のような部屋(しかも左右非対称形状)に住んでいるので不可能である。

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雑談

「ウサギ小屋のような部屋」と言ったが、いずれは引っ越してそれなりにスピーカーを鳴らせるようにしたいものである。とはいえ、過去に住んだマンション等を思い返しても完全に左右対称な形状の部屋などないものだ。例えば「一方は扉やふすまで仕切られていて他方はガラスを通じてベランダに繋がっている正方形の部屋」というのは形状は正方形だが、壁面は左右非対称だ。などなど。

私は過去にちゃんとしたフロア型スピーカーをショボい部屋に導入しオーディオをやっていた時期があって、その結果「いいスピーカーを鳴らすにはまず建物が必要」という結論に達し、それが用意できる状況になかったのでスピーカーを諦めたという経緯がある。その後、ポータブルオーディオをやらなかったりやったりした結果、やはりスピーカーを未来永劫にわたって諦めることは不可能だと思い直した。つまり今はクソな部屋しかないが、数年以内には一応使える程度の部屋に引っ越し、さらに将来的には理想のリスニングルームを建ててやる……という野心めいたものが湧き上がってきたわけである。

(まず隣の家が200mぐらい離れている田舎の一軒家を取得する必要があるので、本当にいつになることやら。それこそ60代になるまで無理かもね)

10年くらい前はまだ若く、何ごともすぐに理想が手に入らないと嫌になっていたものだが、歳をとったおかげで長期的視野に立って物事を考えられるようになった。また、捨て値のスピーカーでも意外に聴けると言うなど、制限された状況で面白味を見つけて楽しめるようになった。理想のリスニングルーム等というのは簡単に手に入るものではない……というか、B&Wのモニタースピーカーよりずっと高価なので、今はDIYを通じて技術・経験を蓄積できれば十分だ。限りなく理想に近い状態で音を聴くだけがオーディオではない。そこを目指すところも含めてオーディオなのであり、それゆえDIYもオーディオの1つの手法なのである。そしてDIYは思った以上に面白いと……。

近況

4BAのイヤホンを製作し、調整中。今回はドライバが壊れる等のトラブルはなく、結構いい音で鳴っている。

*1:当たり前だが、ツイーターに通常の音量の低音を入力すると破損する。ごく微細な信号であれば問題ないが、こういう行為は危険なので高価なツイーターには行ってはならない。

*2:私の耳は20Hzぐらいまでは普通に聞こえる。

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