KZ ZS5 (純正マイク付きケーブル)のクロストーク
イヤホンのクロストークを測定する。クロストークというのはまあようは右の音声信号が左のユニットに流れ込む現象である。「あるかないか」を調べるにはPC等で右側だけ音声を出し、左側のイヤホンだけで音を聴いて聞こえれば「ある」。
クロストークは普通に音楽を聴くときに起きていて、これが大きいほどモノラルに近づくので普通は嫌ってできだけ減らそうとする。その究極の対策がバランス接続である。(4芯アンバランスでもかなり少なくなる)
回路的な説明は面倒なのでリンク先を見てほしい。ようはクロストークのデシベルは左右の回路の共通抵抗をR2、GND端子からLR片方の端子まで測った抵抗をR1として、20*log(R2/R1)/log(10)で求まるということだ。
クロストークのデシベルはテスターがあるなら端子の電極どうしの抵抗を測って計算し求めることができる。(共通インピーダンス = イヤホンケーブルの共通部分の抵抗値)
テスターでケーブルの共通インピーダンスを測る イヤホン測定結果置き場
早速手元のKZ ZS5のクロストークを求めたいところだが、よくみたらプラグが4極3.5mmなのである。よく考えたらマイクつきモデルだった。マイク付き4極プラグのアサインは2つあってCITAとOMTPである。真偽不明の情報だがOMTPは初期のXperiaで採用されたもので、現在はだいたいCITAとのこと。
3.5mmプラグ(ミニプラグ/フォーンプラグ)のピンアサイン(3極/4極/5極) - rencontRe Lab.
CITAかOMTPかは不明なので、とりあえず両方について抵抗値をテスターで計測し、共通インピーダンスとクロストークを計算する。なおテスターはOHM(オーム電機) デジタルマルチテスター 普及型 TDX-200 (04-1855)を使用した。
cita Lch-GND 14.4 [ohm] cita Rch-GND 14.5 cita Lch-Rch 27.5 cita Rc (14.4+14.5-27.5)/2 = 0.7 omtp Lch-GND 14.3 omtp Rch-GND 14.5 omtp Lch-Rch 27.5 ompt Rc (14.3+14.5-27.5)/2 = 0.65 CITA ならば 20*log(0.7/14.45)/log(10) = -26.295 [dB] OMTP ならば 20*log(0.65/14.4)/log(10) = -26.908 [dB]
以上より、CITAと仮定すると共通インピーダンスは0.7[Ω]、クロストークは-26.2[dB]である。OMTPならば0.65/-26.9なので大差ない。
ところで、この-26[dB]というのはいいのだろうか、悪いのだろうか。明らかに悪い。普通に片chから音を出して反対側で聴いてそこそこ聞こえる程度である。「少ないクロストーク」というのは大雑把だが、-80[dB]以下ぐらいかと思う。
クロストーク対策としてはバランス接続とアンバランス4芯ケーブルがある。前者は専用の機器を要するが、左右のGNDが完全に分離されている。後者は3極ステレオだが、プラグの共通GNDに2本の線を繋ぐものである。後者の対策でもかなり改善する。
対策した人のデータを見ると、元のクロストークが-20[dB]、アンバランス4芯で-90[dB]、バランス接続で-110[dB]である。
Sandal Audio: ゼンハイザー IE80 イヤホンの謎と、ケーブル交換の音質変化について
つまりMMCX等でリケーブル可能なイヤホンについて4芯ケーブルを導入することは理にかなっている。が、最近中国の業者がバカ高いケーブルを発売して利益をあげようとしているので注意されたい。(20ドル以下の価格が適正)
またクロストークは共通インピーダンス以外に電磁場によっても起こる(はずである)。この対策としては「ケーブルに導電塗料を塗る」というものがあるが、流石にそこまでしている人はまだいないようだ。必要かといわれれば流石に不要だろう。